群青の天
中世の武士は星空を見て、明日の戦を占っていたようだ。沈む夕陽、月がうっすらと見え、一日の疲れを癒すときだ。現世では安穏な生活を送り、後世では善処に生まれることを願っていたのだろうか。現世利益を求める者は、自然界にあるものを神仏に見立てていたらしい。
自然と一体となった生活をしていた中世の日本人は、日・月・星が人間の運命を支配すると考えていた。
加賀藩の前田斉泰公が母の隠居所として建てた成巽閣には、群青の間がある。朱が主流の部屋の内装にあえて青を取り入れた。フランスから輸入されたウルトラマリンブルーを用いた群青の景色、藩が日本海に面して位置していることを意識していたのだろうか。
幕末で外敵がいつ押し寄せるのかわからない、時代が移り変わる空気を感じ取り、これまでの内なる世界から外なる世界に目を向ける群青の環境を作ったのだろうか。
それとも母の体が衰えるなか、いつでも空や海の青を部屋の中でも見ることができるようにしたい。有意義な余生を過ごしてほしい、子が母へ抱く自然な想いがあったのだろうか。